2021年10月12日大学礼拝(リモート礼拝)のお知らせ

Date:2021.10.07

2021年度後学期第4回

大学礼拝(リモート礼拝)

礼拝動画の配信

 

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聖書 フィリピの信徒への手紙2章3−4節

奨励 「他者への配慮」小林昭博先生(宗教主任)

 

【本日の聖書】

フィリピの信徒への手紙2章3−4節

【新共同訳聖書】

3何事も利己心や虚栄心からするのではなく、へりくだって、互いに相手を自分よりも優れた者と考え、4めいめい自分のことだけでなく、他人のことにも注意を払いなさい。

 

【本日の奨励】

「他者への配慮」

本日の聖書は「他者への配慮」の大切さを伝える内容が綴られています。
3節は利己心と虚栄心、謙虚さと他者を敬う気持ちの大切さに触れています。「利己心」は1:17の「自分の利益を求めて」と同じἐριθεία(エピテイア)が使われており、目の前の人参を追い求めるように、自己の欲望を刹那的に満たそうとする状態を表します。「虚栄心」と訳されるκενοδοξία(ケンドクシア)は中身が伴わないのに見せかけを誇る姿を表し、「自惚れ」や「見栄」といった意味でもあります。「謙虚」と訳されるταπεινοφροσύνη(タペイノフロシュネー)は、この時代のストア哲学では美徳ではなく、自己主張と自己の尊厳を放棄した悪徳と見なされていましたので、パウロは同時代の哲学と正反対の姿勢を見せ、現代にも通じる謙遜さを大切にする生き方に道を開いたと言えます。ですから、続く「相手を自分より優れた者と考え」という言葉も謙虚さを重ねて強調する発言です。4節は自分を投げ打って他者に配慮するように命じているのではなく、「他人のことにも」と「も」が入っていることからも分かるように、自分をも大切しつつ、「他者への配慮」をもしっかりするようにと伝えています。このような自他への配慮は「自分自身を愛するように隣人を愛しなさい」(レビ19:18、マルコ12:31)という隣人愛の教えとも符合し、現代の心理学が「自己を受容できる者がはじめて他者をも受容できる」と指摘する自己肯定と他者肯定のテーゼと通底する人間関係の本質を射抜く言葉だと申せます。
「他者への配慮」という奨励題は、学生時代に読んだH・ナウエン『傷ついた癒し人』(1981年)から着想を得ました。この書物では現代人の苦悩や疎外の根底には孤独があり、他者の孤独に積極的に与る「癒し人」として生きることが勧められているのですが、その癒し人が他者の痛みを抱えきれずに自分自身が傷ついてしまう様子が『傷ついた癒し人』という表題になっています。フィリピ2:3−4が語るように、「他者への配慮」は人間関係や社会を円滑にします。しかし、競争原理社会では、政治を含めた権力闘争が示すように、「利己心」に凝り固まった自分の利益や欲望を満たす人が跋扈し、「他者への配慮」をする優しい人ほど『傷ついた癒し人』になり抑圧されますので、優しい人ほど自分を大切にして欲しいのです。

 

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